【アジア株・アセアン株個別銘柄紹介】シンガポール・ポスト(SPOS:シンガポール)
こんにちはmokomoko3です。今回はアジア・アセアン株の売買ランキングで常に上位に顔を出す、
シンガポール・ポスト(SPOS:シンガポール)の銘柄紹介を行っていきたいと
思います。
なお、シンガポールポストはシンガポールテレコムの関連会社となっています。
シンガポールテレコムに関しては過去記事で取り上げています。ぜひご覧ください!
過去記事:「【アジア株・アセアン株個別銘柄紹介】シンガポールテレコム(STEL:シンガポール)」
会社概要
【シンガポールポスト会社概要】 |
Post:Sing Post)は、シンガポールに拠点
を置く物流会社です。もともと150年以上
前からシンガポール国内で郵便事業を
行っていました。しかし、近年のデジタル
化の波にのまれ、郵便事業が年々縮小。
2014年に中国の電子商取引大手のアリバ
バグループと資本提携を発表し、郵便事
業からeコマース物流会社へ転換を図りました。世界中の届け先に24時間以内に配送が
完了するよう、19ヵ国に配送拠点を整備しており、究極的には顧客宅へ自社で配送できる
よう事業を統合するなど、全社を挙げた構造転換を図っています。
【シンガポールポストセグメント情報】 |
②物流事業、③eコマース事業の3つの事
業に取り組んでいます。①郵便事業は、国
際郵便は増加する一方、デジタル化の進展
に伴い、国内郵便は年々減少しています。
こういったトレンドに対応するため、シン
ガポールポストは、集荷から仕分け、最後
の1マイルの配送*1に至るまで、機械化や電子認証技術を応用したサービスで効率化を
行っています。 また、②物流事業ではアリババグループとのジョイントベンチャーである
Quantium Solutions International(QSI)という会社を通し、アジア太平洋地域で物流
サービスとEC会社に代わって受発注から梱包、配送、在庫管理や入金までを行うフルフィ
ルメントサービスを提供しています。そして、③eコマース事業では2015年に買収した
ジャグド・ピーク(Jagged Peak)社とトレードグローバル(TradeGrobal)社の2社を通
して、北米でのフルフィルメントサービスを提供しています。
*1 最後の1マイル(last mile)とは、物流拠点からエンドユーザーへの配送のことです。
eコマース市場の拡大によって、最後のエンドユーザーへの配達は、①物量の増加に対応できない、②委託先への配送料の高騰、③再配達などの非効率性といった問題を抱えるようになりました。こうした問題に対応するため、シンガポールポストは自社で物流網を統合したり(①、②に対応)、携帯アプリや宅配ボックスの活用・整備(③に対応)を行っています。
業績推移
【シンガポールポスト 業績推移】 |
シンガポールポストの2017年の業績は、売上が1348
million S$(1 S$≒81.6円なので約1101億円)、純利益
は33.4 million S$(≒27億円)EPSは0.85 Scent
(≒0.6円)となっています。13年度の業績は、
売上658 million S$(≒537億円)、純利益が136
million S$(≒111億円)、EPSが6.44 Scent
(≒5.2円)となっています。17年度/13年度の業績を
比較すると、売上が104.8%の増収、純利益が75.4%の減益、EPSが86.8%の減少となっ
ています。
【シンガポールポストセグメント別業績】 |
TradeGlobal社の主要顧客2社が、経営破
綻(アメリカのアパレル大手チェーンザ・
リミテッド)、自社で貨物事業を行うと
(こちらの顧客名は不明)したためです。
ジャグド・ピークの業績は好調だったもの
の、この影響によりトレードグローバル社に減損が発生したため、eコマース事業全体で
33 million S$の赤字を出すことになりました。さらに、郵便事業は国内郵便の減少により
減益に、物流事業は(1)物流網の建築コストが上昇し、減価償却費やランニングコストが上
昇、(2)競合他社との競争、(3)貨物運賃の下落と貨物輸送量の減少という3つの複合的な
要因によって、すべての部門で営業利益が減少しました。
今後の業績について
【シンガポールポスト18年度3Q業績】 |
との提携や、15年のジャグド・ピーク社
やトレードグローバル社の買収によって、
13年比で売上を倍増させました。しか
し、郵便事業の衰退と、物流事業の複合的
な業績の悪化、eコマース事業のトレードグローバルの業績不振という傾向は、2018年
3Q決算をみても変わっていません。全社累計の売上高は+9.5%と増収になってはいるも
のの、国内郵便の減少で郵便事業は2.2%の減益、物流事業は主要顧客の1社に破綻懸念が
あり引当金を計上したため76%の大幅減益、 eコマース事業はジャグド・ピークの好決算
に支えられ+41.9%の増益でしたが、額でみると10.8 million S$の営業損失となって
います。このように、シンガポールポストは14年のアリババとの提携以降、eコマース化
に対応するため積極的に事業投資を行ってきましたが、規模の拡大に急ぐあまり収益性が
大きく悪化しています。今後の業績に関しても、減価償却費などのコストの増加が見込ま
れることから、利益面で大きく不安が残ります。
配当推移
【シンガポールポスト配当推移 】 |
をみていきます。シンガポールポストの
2017年の配当額は前年比-50%の3.5
Scent(≒2.8円)となっています。
トレードグローバル社の減損損失を計上し
たため、17年度の配当性向は411.7%となっており、内部留保を取り崩して配当を実施
した形となっています。
今後の配当について
シンガポールポストは配当性向60~70%を目途に配当を実施すると公表しています。実際、17年度を除く直近5年の配当性向は76.9%となっており、他社に比べると配当に積
極的と言えます。しかし、eコマースへの対応のために巨額の投資を行っており、減価
償却費等のコストの増加が予想され、今後の利益に期待が持てない状況です。
したがって、今後の配当に関しては、減配もしくはトレードグローバル社で減損損失を
計上した17年度の3.5 Scentに近い額の配当を内部留保を折り崩す形で実施するのでは
ないかと思います。
株価推移
【シンガポールポスト株価推移】 |
みていきます。シンガポールポストの株価
は2018年4月10日時点で1.32 S$(≒107
円)と業績の低迷に伴って、株価も低迷し
ています。これまでの郵便事業がデジタル
化の進展でジリ貧の事業となってしまったために、シンガポールポストはeコマース化
への対応を推進。巨額の設備投資を実施しています。買収の失敗や減価償却といった
コスト増から目先の業績は期待できず、今後も株価は下落基調を強めそうです。
株式指標をみると、17年度の一時的な損失の影響もあり、PERは155.0倍、PBRは1.7倍、
配当利回りは1.53%と割高な状況です。最低限業績が落ち着くまでは投資を控えたほうが
よさそうです。
まとめ
シンガポールポストは安定した郵便事業を捨て、eコマースに対応した世界的な物流会社への構造転換を図っています。ですが、その代償に収益性は大きく悪化しています。
今後の業績は不透明で、株式指標も割高感が残ることから、投資は控えたほうがよさ
そうです。
【おすすめ度☆1つ:構造的な変化が起きない限り投資は見送ったほうがよい】
一口コメント:1~2年は投資は控えるべきです。
現在の業績★☆☆☆☆
将来業績 ★★☆☆☆
業績安定度★★★☆☆
株式指標 ★★☆☆☆
配当利回り★☆☆☆☆
☆5つ…積極的に投資したい
☆4つ…余裕資金があれば打診買いで投資したい
☆3つ…株価が下落(5%~20%)すれば投資を検討したい
☆2つ…株価が大幅下落(20%~30%)すれば投資を検討したい
☆1つ…構造的な変化が起きない限り投資は見送ったほうがよい
以上、ご参考にしていただければ幸いです!
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